カメムシは自分の臭いで死ぬ

カメムシ

僕はほぼ都心部に住んだことしかなく、ご他聞にもれず田舎暮らしにちょっとした憧れがあります。広い田んぼと遠くに見える小山、あるいは眼下に広がる港町とカモメと猫、青い空ときれいな空気、的な。

しかしガチで田舎暮らしをした人と話すと、当たり前ですが嫌なことも多いそうで。そのうちよく出る話題のひとつが虫、特にムカデとカメムシの話はよく聞きます。
東京にいればまず体験しませんが、カメムシは一年の特定の時期になると家の中に大量発生することがあるそうです。そしてあの耐え難い悪臭を放つ。知人は窓のサッシの隙間にビッシリ張り付いたカメムシを見たときに、「あ、早くここから抜け出して、都会へ引っ越さなあかん」と感じたそうです。

そんなカメムシですが、アース製薬(株)で害虫の飼育・繁殖を担当される有吉立さん著の「きらいになれない害虫図鑑」によると、野生種から飼育を始めて代を重ねることで、だんだん臭いが弱くなるのだそうです。天敵がいない環境では、外敵に備える必要がないからでしょうか。
また、自然環境下では密閉状況というのはそうそうないわけで……。

でもこの臭い、カメムシ自身も耐えられないらしく、密閉容器に入れておくと、自分たちの臭いで死んでしまいます。研究員に頼まれて直径10センチほどの密閉容器に4~5匹入れて渡したところ、1時間もせずに死んでしまったんです。
引用 – 「きらいになれない害虫図鑑」26P(有吉立:著/幻冬舎)

というようなことも起こるようです。その後研究の結果、臭い成分の中に毒性のあるアルデヒドが含まれていることがわかったのだとか。

この本では他にも害虫たちのなさけない生態や笑える習性、人に話したくなるようなエピソードを数多く紹介しています。ムカデの子育ての様子や、ホテルでトコジラミがいるかどうかのチェック方法とそのかわしかた、ショウジョウバエやノミバエの効率的な育成方法など、憎たらしいあの連中にもこんな一面があるのだな、という発見もありますし、ものによっては愛らしさすら覚えます。また害虫を飼育するプロフェッショナルならではの、「言われなければ絶対に思い浮かばない」リアリティ溢れる情報も見所。たとえば有吉さんは居酒屋に行くと、その店にどんな種類のGがいるのかわかるのだそうです。その理由は……とクイズを出して、正答がひねり出せる人はほとんどいないでしょうね。
かなり面白い本で、リアルなイラストや写真などもないのであまり抵抗感なく読めました。冒頭にあるGの章だけはゾワゾワしながら読みましたけど……。

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